母と同級生



「おはよう、元哉」
翌朝、美母はいつも通りの優しい笑顔に戻っていた。今、元哉と美奈子、
そして健太と京介の四人は仲良くテーブルについて朝食をとっている。
元哉を除き、三人はいつもと変わらぬ様子で談笑していた。
しかし、元哉だけは視線を宙に泳がせうつろな表情だった。
元哉は昨夜の淫事を目撃した後、どうやって部屋に帰ったのかは覚えていない。
ただ美しい悪夢に犯された少女の様に布団を被って眠りについたことだけを覚えていた。
美母の呼びかけにも反応の無い元哉に、隣にいる健太が心配そうに声をかける。
「どうしたんだよ、元哉」
はっ!と現実に引き戻された元哉。自分を思いやる友人の暖かな視線に昨夜の淫景がシンクロした。
しかし、あえて冷静さを保つ。
「ああ、なんでもないよ。寝不足かな・・・ははは」
「よく言うよ!一番早く寝てたじゃんかよ」
健太は元哉にそう言いながら、美奈子お手製のクラブサンドを食んでいく。
旺盛な食欲がそのまま美奈子を苛む原動力になるといった感じだった。そして元哉は健太と京介に問う。
「今日はどうする?どこか遊びに行くか?」
すると二人は顔を見合わせて、示し合わせたかの様に言った。
「いや。朝食頂いたらすぐに帰るよ、着替えもしたいしさ」
二人の物言いにどこか不審さを感じる元哉。そしてその不信感は、美母、美奈子にも向けられた。
美奈子は素っ気無いふりをしてはいるが、どこかこの二人と通じ合っている様に見えた。
立居振舞の全てが、なにかぎこちないのだ。
(ここは様子を見たほうがいいな・・・・・)
一人、静かに意を秘めた元哉は視線を落とし気味にしている美奈子を見つめながら、
良策を思い浮かべるべく長考に耽るのであった。

二人の友人を見送った後、美母は息子、元哉に今日の予定を尋ねてきた。
「元哉、お母さん今日ちょっとお出かけしたいんだけどお留守番頼めるかしら?」
元哉は自分の都合を告げる母親の表情を見逃さなかった。
まなじりがほんのり紅らんで明らかな性の蠢動を知らせている。
最近美奈子は、週末になると決まって半日ほど家を空けるようになっていた。
それも、健太と京介が泊まりにきた翌日に限り…。時期も新学期が始まってからというのも、
決して偶然では無い、と元哉は踏んでいる。
「いいよ、いってらっしゃい。お土産頼むね」
わざと明るく振舞い、快諾した元哉。彼は美母の微笑みの裏側にある女の本性を、
どうやって暴いてやろうかという意欲に溢れていた。
(ここで悟られてはいけない)
そんな息子の思惑に反して、美母はいそいそと化粧をして家を後にした。
(さて、尾行開始だ)
帽子を目深に被り、急ぎ足の美奈子を追う元哉。
つかず、離れずの距離を保ちながら彼女を見失わぬ様に間合いを詰める。
今日の美母のいでたちは幾分若ぶった感じのドレスシャツに、ヒップの形がはっきりと浮き出た
デニムのミニスカートであった。少々、派手目の化粧も、ぱっと見は二十台半ばの遊び人といった感じが伺える。
(たしかにやりたくなるようなお尻だな)
元哉の中にも美母を淫女として見る衝動が沸き起こっていた。
しかし、今は美奈子の不貞の事実をつかみたい。そして彼女は元哉にとって馴染みの深い場所で、足を止めた。

(ここは学校じゃないか!)
美母が訪れたのは元哉たちが通う学校であった。休日の折、門扉は閉ざされていて校内には誰もいないはずの学び舎。
そこに美奈子は立っている。
(何の用があるっていうんだ?)
元哉にはまだ彼女の意図が理解出来ないでいる。そして彼女はさらに理解不能な行動に出た。
なんと彼女はきょろきょろと辺りを見回すと、スカートが捲れるのもお構い無しに
閉ざされた門扉をよじ登り始めたではないか。
(何やってんだ!母さん!)
捲れあがったスカートの後ろから、大胆な色使いのパンティがはっきりと見えた。
サテン地に彩どられた紫色のパンティ。タンガショーツと呼ばれるTバックになったその下着は
股布の部分があからさまに透け、秘唇の存在をあらわにさせている。そんな美母の淫猥な光景に、元哉は混乱した。
(何がどうなっているんだ!)
美奈子が校内に忍び込むと、元哉もそれに続く。美母は何かに引き付けられる様に走り出すと、
校舎の奥まった場所にあるクラブハウスに向かった。運動部の部室として使われているその建物は、
市立のものとしては立派で、シャワーなども完備している更衣室の様なものであった。
美奈子はその建物の入り口に立つと、中から出てきた男にうやうやしく、招き入れられた。

「待ってたよ、美奈子さん」
「うふっ、ごめんね。支度に手間取っちゃって・・・」
そう言って美奈子を招き入れたのは親友の京介であった。そして笑顔で応える美母。
ここまで来ると元哉もようやく経緯を理解した。健太と京介は自宅で美奈子を嬲るだけでは無く、
休日の学校でも淫蕩な行為を重ねていたのだ。確かにここなら誰かに見られる心配は無い。
不義の密会にはもってこいの場所であった。そこまで判ると元哉は考えた。
美母の様子を見れば同意の上で行っている事には間違い無い。
不貞を糾すかどうかは別として、今の自分には何も出来る事が無いのではないかと想う。
(帰るか・・・。この事はゆっくり考えないと大事になるぞ・・・)
聡明な元哉は冷静な判断を以って臨もうとした。事が大きくなれば傷つく人間も増える。
それは誰にとっても得策とは言えない。出来るだけ穏便に済ませることが重要である、と彼は考え始めていた。
その為にも美母の淫行の現場を押さえたいと思う元哉はクラブハウスの裏手に回り、中の様子を探ろうとした。
(ここから中が見えるはず・・・よいしょっ、と)
元哉は建物の裏手に回ると隣接した壁をよじ登り、採光の為に設けられた天窓から中を覗き込んだ。
十畳程の更衣室の中で、美奈子と健太、そして京介が並んで何かを話合っている。
彼らは美奈子の肩を気安く抱いて、ときおり唇を重ねたりしていた。
(ちくしょう、健太と京介のやつめ・・・ん!あ、ああっ!)
その瞬間、元哉の目に全く以って予想しなかった光景が飛び込んできた。

美奈子はすでにピンクのキャミソールに、先ほど見た紫色のTバックのパンティという格好で
両サイドを健太と京介に挟まれている。しかも美奈子はSMの女王様のようなアイマスクをしており、
わずかではあるが人相が判らない様にしている。しかし元哉が驚いたのはそれらの事では無く
美奈子と健太たちの前に居並ぶ男達の方であった。
(なんだ!あいつら!)
美奈子たちの前には十人ほどの、恐らくこの学校の生徒と思しき少年達が鎮座しているでは無いか!
しかも誰もが服を脱ぎ、パンツ一枚といった様相を呈している。
彼らは美奈子の登場を待ちわびていたらしく、口々に美奈子の淫姿へ下卑た野次を飛ばす。
「色っぽいぜ!美奈子ちゃん」
「マン毛が透けてるよ!エロいなあ」
「ああ、早く嵌めたいよ!美奈子!」
美奈子ははやしたてる少年達に、少しも臆する事無く言い放つ。
「ふふふっ、焦っちゃ駄目よ。まずは乾杯といきましょう」
美奈子を中心に少年達は車座りになり、持ち寄ったビールを取り出して乾杯を始めた。
酒宴が始まると、美奈子は場末のキャバレーのホステスよろしく、少年達の間を忙しなく行き来する。
少年達は、熟美のホステスが自分の近くを通る度に、彼女の尻や太腿をいやらしく撫で付けた。
しかし美奈子は少しも嫌がる素振りを見せずに、嬌声を上げながら更に彼らの劣情を誘う。
それは元哉の知る、優しい母、美奈子では無く、一匹の牝獣といったものであった。

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